「シークレットジーン」〜作品解剖各論(後編)


ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございます。

 

「シークレットジーン」語り編。今回で最後の最後

第1回目ブログでは制作までの道のりや裏話を書きました。

第2回目ブログではアルバム全体の主観的印象や裏話part2を書きました。

第3回目のブログでは楽曲解説part1として書きました。

 

 

今回はpart2ということで、アルバムの6〜10曲目まで書いて終えようと思います。

 

 

 

▼シークレットジーン〜各論

 

 

6.スティグマ

 

よくこんな展開の曲が作れたなあと自画自賛しています。

長い曲でもシングルカットになるような作品をと、気合を入れて作りました。

それぞれのリフはそんなに特徴のあるものではなく、自然なリフが並んでいると思います。

だけどそのシンプルさがかっこいいかなと。

しかも珍しくストラトで録音したんですよね。

ギターの枯れ具合や、ジャキっとした感じをこのような曲で出すのは斬新かと思っての試みでした。

全体として陰鬱とした日本のホラー映画みたいな湿度を出したかったです。

ラスサビ前は子供の頃に教会でお祈りした懐かしい記憶、みたいなものを彷彿とさせたくて作りました。

 

おっと、音ばかり書いてしまいましたが、歌詞の部分も。

この曲も絶望感を書いています。生きることへの後ろめたさですね。

ストーリーとしては、大罪を犯して逃げ回る男の生活をイメージしました。

このシチュエーションではあまり同情もされないでしょう。

しかしその人にもいろいろな気持ちがあるのだろうと想像して。

そして状況は違えど、悪人でなくても、許しを乞うて生きる人もいると思います。

これはあくまでフィクションです。

このストーリーを通じて、自分を責めて生きる人が、自分なりの逃げ方に気づけたらいいなと思うばかりです。

 

 

 

7.ブルーオーシャンへ飛び込んで

 

強いて言うならこの曲が一番新しいし、ちょっと今っぽいかもしれません。

こういう曲を作ろうと意識したわけではなかったけど、たまたまあったリフやメロディがポップで。

このアルバムに採用したいなと思って作り始めました。

ただサビ後にノイジーにしたり、ベースを目立たせるパートを作ったり、個性もあり王道ロックな部分もあると思います。

余談ですが、レッチリのフリーを想像しながら作ったソロだったのですが、ベーシストに聞かせたら全然違うと言われてしまいました笑

 

「未開拓市場」の意味で使われる「ブルーオーシャン」。

そして言葉通り、地平線まで見渡せる青々とした海。

ダブルミーニングで歌詞を構成してみました。

今の世の中はほとんどがレッドオーシャン。音楽だってそうです。

歴史が積み重なって、情報社会になって。こんな中で本当に新しいものなんて生まれません。

だからといって、「こうすれば大衆受けするんでしょ?」と言わんばかりの小癪な売り物は好きじゃないです。

歌詞の「エロいドレス着た女」とはとあるキャバ嬢を想像して書きました。

(もちろんキャバ嬢へのリスペクトも持っているつもりですので悪しからず)

言いたいこととして、やっぱり俺は刺激が欲しいし、新しいなって思うものに出会いたいということ。

このアルバムを作っていても、自分なりの「新しさ」を表現したいなと思って出来上がった1曲でした。 

 

 

 

8.くだらない気持ち

 

曲調としてはポップロックだと思います。

このような曲はしばらく出せていなかったなと思い、過去作「フロー体験」の気持ちを忘れたくないなと思って作りました。

爽やかなんだけど、ズンと重くするところは作りたいなと思って、チューニングもDrop Dにしてます。

 

サビは英語になっています。

w-mにも英語を使う曲がしばしばありますが、これは「音の気持ちよさ」を優先してのことです。

日本語で全部書きたいんだけど、どうしても言語の強み・弱みはあると思うんです。

英語っぽく聞こえる日本語にも挑戦しようか迷いましたが、桑田佳祐やマキシマムザホルモンのようには出来ませんでした。

こんな時は、そこまで拒絶感なく、英歌詞を使うことができます。

 

歌詞は虚しさや虚勢を表現していますので、「アイロニー」と近い内容です。

表現のアプローチを変えつつ、ストーリーにはロマンス要素を加えています。

俺は自分らしさというものを、特に飲み会の場では表せないなと後悔することが多いので、その経験から書いたところが大きいです。

 

 

9.酔生夢死

 

勢いのある曲を作りたかったし、ちょっと俗っぽく邦ロックみたいな曲があってもいいかなと思った。

サビ前のリフのダサさは重々認識していますが、これがはまるかなと思って形にしました。

演奏的には割と難しいことをしているつもりです。

ギターを弾いてみたら楽しいのではないでしょうか。

 

家で酒を飲む日々。

ここでも何も残せず虚しい。何をやっても楽しくない。

なんで人は笑っていられるんだ?

酔っているのは自分なのか、世界なのか。

そんな中で気づくんですよ。大して他人も楽しめてなさそうだなと。

楽しさも悲しさも、感情は自分でどんな線引きをするかだけなんですよね。

俺の楽しさ60%はアイツの楽しさ90%かもしれないし、逆もしかり。

感情、そして幸せを比べるなんて不毛なんですよ。

それに気づいて、この主人公はジャカジャカと無意味なギターを掻き鳴らすことが出来たのでした。

 

 

10.喜怒哀楽虚

 

本作で一番芸術的な1曲になったと思います。

歌詞を表現するために、メロディや歌唱も平坦かつ冷たくしました。

俺がやりたくてなかなか出来ない、「coldな楽曲」を作ることが出来たなと思っています。

この曲は解説よりも、聴いて感じてもらえると嬉しいです。

 

改めて、w-mのテーマには「ダウナー/アイデンティティ/モラトリアム」があります。

その中で虚無感というのは付き纏いますし、今回はそれを大人な形で表現出来たと自負しています。

特にテーマの一つでもある「ダウナー」は、そのタイトル曲もあり、1st album「海月の寝室」にも収録されています。

「喜怒哀楽虚」では、「ダウナー」の歌詞も引用されています。

「ダウナー」では抑鬱感や渇望する優しさを表現していますが、この「喜怒哀楽虚」はその後日談のような感情を書いています。

一生物の虚無感。

これは抑鬱真っ只中に感じるものとは異なり、求める希望の形も異なるのだと思います。

実体験より、そんな感情の流れを描いてみました。

 

 

 

以上、ありがとうございました!

濃密に書き切りました。

またブログという形でも発信をしていこうと思います。

無理のないペースでね。

 

今回書いていて再認識したのは、楽曲の歌詞もすごく大切にしているつもりだということです。

歌詞として届けば嬉しいなと思うけど、文章である点はブログも同じです。

しっかり想いを伝えることをしたいし、この自分だからやる意味があるということを忘れずに、懲りずに発信していこうと思います。

それではまたね。