何も知らない

ひぐらしの唄う公園で

呟くように数を数えていた

四肢にはアザが二十数個

袖丈伸ばした帰り道

助けてほしいと願うより
隠すことだけただ考えていた
夏の陽だまりに影落とし
ばつの悪い思いで逃げ出した
溶け出した夜を裂くように
僕を真っ直ぐ見つけ あなたは微笑んでいた

どっちつかずの空模様の下 あなただけは僕のこと

何も知らずにいてくれた

下手っぴな僕の歌も素敵だねって言ってくれた

車窓から揺れるイルミネーション
無邪気にはしゃぐ大人たちの顔
彼らも寂しい生き物だ
通知音に胸を焦がすくらいに
知らなかった 変わらないどころか
精一杯になって見ないフリをして息をすること

痛みを抱いていたいくせして

忘れそうで嫌になる

少しあなたを浮かべてみた

ぼやけた輪郭だけど今も確かに残っていた

 

街を鮮やかな粉雪が照らしてくれるのに

思い出す あの夏の光景

人はなぜ愚かなのでしょう

 

 

どっちつかずの空模様の下 あなただけは僕のこと

何も知らずにいてくれた

そうやっていてくれたね

強がる必要も忘れるくらい あの瞬間が嬉しくて

今も胸が覚えている

拙い心の声が 尊敬という気持ちになって