崩れた計画の夏休み、2021。
俺は毎日死にたくなっていた。
酒の味にも飽きてきたところだが、別に死ぬ選択肢などないまま過ごしていた。
これはただの挫折だった。
先に端的な現状報告をしよう。
ずっと作ってきた作品が完成した。
しかしコロナとか色々あって今は出すのが難しいなと判断し、活動自体を辞めてしまおうかと追い込まれた。
またか…という感じで、分かりやすく精神的なダメージを感じていた。
その少し前から、耳の調子もまた悪化してしまい、正しい音が何か分からなくもなった。
がんじがらめのようだった。
これが、ここ最近の生活だ。
そんなテンションで、俺は夏休みに入った。
夏休みの正体はただの強制的な有給休暇なので勘弁してほしいが、それも贅沢な愚痴なのかもしれない。
何をすればいいか分からないが、とりあえず睡眠ばかりして数日が経つ。
何百と音楽を聞いた。
歌詞なんて分からなくても、音という記号だけで身体が刺激を受けていた。
やっぱり音楽って歌詞も大事だけど、聞いていて気持ちいいことが大事だしその力があるのだと思う。
と、また、音楽のことを考えていた。
ふとしたきっかけで、ニンテンドースイッチやらPS5やら、今はいろいろなゲームが出ていることを思い出した。
誰よりもゲーマーだったあの頃は今は昔、カルチャーとは桁違いに浸透したのだなと思わされる。
元々ゲームが嫌いになったわけじゃない、それに費やす時間がなくなってしまっていただけなのだ。
その時間を取り戻すのも良いかもなと、ヨドバシカメラに立ち寄ってみた。
転売商品の代表格だったスイッチは当たり前のように店頭に並んでいて、面白そうなソフトもたくさんあった。
俺も大人になったのだ、金額も見ずにポンと買ってしまおうかと思った。
しかし一点だけ気がかりなことがあった。
「そのゲームを心の底から楽しむことができるだろうか?」
ずっと昔から持っているこの気持ちがレジ手前で改めて蘇る。
世界一くらいに大好きだったゲームというものをやってみて、楽しくなかったら怖いのだ。
そして、そう思わせる原因は、なんだろう?
俺は今回も買えなかった。
酒だのアニメだの、他の娯楽には触れているくせに、ディープな世界に身を投じるほどの勇気が持てなかったようだ。
なんて非効率的な。
また振り出しに戻り、やることがなくなった。
無気力の中、やることと言えば考えることだ。
何がしたかったんだっけ?
自分のことばかり考えてみるが、他者のことも考えてみる。
俺の私情云々は抜きにしても、悲しい世の中だなあと思う。
豊かなくせに酸素が足りていないこの世の中に、人はどう思うのか。
俺だけなのだろうか。
みんなはそれなりに満足しながら死へ向かっているのだろうか。
この令和という時代も特別なことはなく、ただただ無常に流れていくのだ。
きっとその無常な社会に、期待と諦念を抱きつつ、幸運と不運を交互に一喜一憂するのが今風だ。
音楽だって、線香花火のように、とあるアーティストが灯っては消えていく。
それならば、あんまり利口なことは考えず、ほんの一瞬を楽しめた方がいいのかもしれない。
あまり完璧を求めていてはいけないのかもしれない。
心の揺らぎを感じながら、蝉の鳴く声を聞いている、2021の夏。
燻っているのは、いつものことじゃないか。
-今日のおすすめの1曲-
Circles - Post Malone
-コメント-
深い意味はなく、ただただ聞いている。
コメントをお書きください